「ネタ化」に対抗するにはどうするべきか

コンテンツをネタにしてコミュニケーションをとろうとする限り
コンテンツは「ネタ」として消費されていく他無いし
かといって自分以外の情報をシャットアウトしたのでは、ネットを使っている意味がない


重要なのは、コンテンツを「話のネタ」として扱うだけでなく
それ単体の価値を問うていく姿勢を忘れない事だと思います
それを「批評行為」と呼んでもいいです
「これ面白いよねー」「萌えるよねー」というような
「同好の士」同士の共通前提が無いところから
作品の本質に切り込んでいくことです


コンテンツを「ネタ」扱いする事なく
一対一で真摯に向き合い、批評・評価する
それはつまり、作者と受け手のコミュニケーション行為でしょう


偽日記 - 05/05/15(日)
http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/nisenikki.html

●こういう言い方をすると、ある種の人たちを無駄に刺激することになってしまうかもしれないのだけど、「○○について語るなら、最低限××について押さえておくべきだ」とか、「そういうことは、○○をちゃんと勉強してから言え」とか、そういうようなことを言う人は、多くの場合、お前は私が「前提」としていることを、同じように「前提」にしていないではないか、ということを言っているに過ぎないのではないか、と思う。(そしてそれは、同じ「前提」を共有する玄人集団の既得権を守ることにしかならないのではないか。)しかし、あなたが「前提」としていることが、何故、当然わたしも「前提」とすべきことだと言えるのか。むしろ作品とは、そのような共通の「前提」など成り立たないところで、何かを伝達し得る強さがあるからこそ貴重なのではないか。私は、私の問題、私の興味、私の資質、私の趣味、私の症候を徹底して追求することで、作品にある充実を与え、その充実によって、私と、問題、興味、資質、趣味、症候を共有しない、全く別の問題、興味、資質、趣味、症候を抱えている人の触覚にも、何かしら触れることが出来るものが生じ、その時こそ、(事後的に)作品に意味が生じる。共通の前提や文脈があてに出来ないところで作品をつくることは、それをつくる者に大きな負荷を与えるのだが、同様に、それを受容する(読み込む)側にも、高い負荷を要求する。(共有される前提や文脈や問題のないところで作品を「読み込む」ことは、作品を「作る」以上に難しいかも知れない。)しかし、そのような高い負荷によってこそ、作品という特異なコミュニュケーションの意味が生まれるのだと思う。

作者の思いを正面から受け止めて、理解しようとすることは
とてもしんどいことだし、ただ消費するよりずっと難しい


だけども、ネットに散らばる「情報」のうち
他の人の感想や批評
こうした「作者対受け手」のコミュニケーションにおいて、相手のことを理解する上での
重要な「思考のヒント」になりうると思いますし
ぼくが書評系のサイトを読むときは、まあ大抵そういう向き合い方をしてるんですけど


ネットが面白いのは、「全く同じ考えを持ったもの同士で馴れ合う」ことが出来るのと同様に
「全く違う考えを持った同士で語りあう」ことも出来る事だと思います
それで作者の意図がよりクリアな形で受け手に敷衍されることになれば
作者だって嬉しいでしょう


その段階で「ぼくたちアニメ批評論壇だい!」みたいな痛い勘違いをする奴が出てくるかも知れないですが
まーそういう人は放っておけばそのうち気にもとめなくなるし(わらい)

ネタでとらえきれない何かを求め続けて
富野監督のガンダム(ファースト)が「人生を変えろと迫ってくる」(東浩紀)と言われるように、ネットという空っぽの胃袋に飲みこまれても消化されず、ネタを越えた何かを感じさせてくれるアニメを求めて、今後もアニメを見続けるし、感想も書き続ける。それがそもそもネット上のネタに過ぎないという自己矛盾は承知の上で……。

「ネットという空っぽの胃袋に飲み込まれても消費されない」アニメとは
上記したような「(作者と受け手の)マンツーマンの対話」に耐えうる作品、なのでしょうけど
それだって「受け手の側に真面目に作品と向き合う姿勢が無ければ」
誰にとっても「人生を変えろと迫ってくる」ものにはならないだろうし
それって作品の問題というよりも、純粋に受容の仕方の問題だと思うのですけれども
そういう視線が(徹底して受け手の側から書かれた文章にも関わらず)
あまり伝わって来ないのも気になりました


あと
rinamoさんがやられているような、放映されたアニメの粗筋やスタッフをきちんと記録したり
その内容についていちいち感想を書いていくようなことは
いくら謙遜だとしても「ネット上のネタに過ぎない」という批判は当たらないものだと思います
少なくとも、この文章を「ネタ」にうなづき合戦などを行う度胸は、ぼくにはありません


えらく長くなりましたが、僕の考えは以上です
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました