営業マン的コミュニケーションが必要な理由

しばさんのところから
先日「空疎な謝罪」と題してリンクした部分だけど


strange - 謝罪
http://d.hatena.ne.jp/strange/20050927#p1

某所から

しかし2ちゃんの子は最初は勢い良いのに、すぐ表面上だけ卑屈なまでに腰が低くなるのな

さらに

http://d.hatena.ne.jp/prse/comment?date=20050923#c

正面切って抗議すると、さっきまで調子コイてチョロチョロ引っ掻いていた奴が崩落して土下座(OTL)します。まるで自分(達)が旧世代のヤクザにでもなった気分ですが(苦笑)、もうそれで結構だ。と思ってます。まあ時代の流れですね。』

それとは別件で、別の人も「最近のやつはすぐに表面上謝って引っ込むのな」的な話を(たしかハレンチ★パンチがらみ)で感想を述べてたのだが。

まーそういう人たちとは別に、芸能人とか大企業の社長とかもすぐ謝るじゃん。隠したりしないでさっさと認めて謝ってミソギをすませた方がトクといわんばかりに。

おれもエチケットペーパー*1で最初に謝罪しとこうかなあ。

これが掲載された次の日に挙げられたURLが話題のようだ


ポスト「ポスト団塊ジュニア」の生態学〜「近頃の若いもんは」という前に〜
http://www.athill.com/LAB/COLUMN/05_column02.html

男の子たちのコミュニケーションは、例えるならば「営業マン」のそれだ。相手の目をきちんと見てうなずきながら、相手に信頼感を与えつつ落ち着き払って会話する。時には気を遣ってくれ、ほめてくれたりもする。まるで自分たちが接待されているかのように錯覚するほどである。
 女の子たちは、男の子とは対極にある達人ぶりを発揮している。営業担当者というよりは、むしろ「お笑い芸人コミュニケーション」といえるだろう。間髪入れずに、ノリとテンポで大声で話す。話も面白く、まるでお笑い芸人のライブを見ているようである。「○○とか言っててさ〜」と一人が言えば、「あるねー!」「まじウケる!」「サイアクー!」などと次から次へと大きな声で合いの手が入る。場を盛り上げるパワーには驚かされることが多い。

 ケータイ料金だけでなく、10代が所有するケータイに登録してある電話番号や電子メールアドレス(メルアド)の多さにも驚かされる。
 例えば男の子のケータイに登録してある電話番号やメルアドの件数は平均で七一・六六人分である。彼らは人に出会うとすぐに互いのメルアドを交換するだけでなく、その日仕入れたメルアドを、ほかの友人にも転送する。
 社会人ともなれば、もしかしたらこれくらいの件数の登録があってもおかしくはないかもしれない。だが、彼らはまだ10代の少年少女である。ほんの十数年前ならば、交友関係はクラスや部活動など学校の友人が中心で、その人数はせいぜい十人から二十人ほどでしかなかっただろう。今回の調査で件数が最も多かった男の子では、実に三百五十人分の登録があった。
 10代の若者たちはケータイに電話番号やメルアドを単に登録しているだけではない。そのおびただしい数の交友関係を常にメンテナンスし続けている。コミュニケーションの中心は、通話ではなく電子メール(ケータイメール)である。
 例えば、男の子が一日にやり取りするメールの件数は、送受信を合計すると平均で二六・九六通。最も件数が多い子では、一日に二百通ものケータイメールをやり取りしていた。彼らには、「メールを交換しなければならない」という義務感すら生じているようだ。

記事の大まかな内容自体は、まーわれわれワカモノのドーブツ化*1は着々と進んでいるのですねーという感想しかないんだが
しばさんの言われているテーマに共通する、若者のリスクヘッジ志向の考察は興味深かった

既に肉体の一部ともいえそうなケータイの存在は、かつての若者には予想できないほどの規模に交友関係を大きく広げた。結果、10代の若者たちは、地縁や血縁、学校縁を超えて、数多くの様々なタイプの人間と接する機会が増えた。これが価値観の近いクラスの仲良しとだけ接していれば良かったかつての10代とは大きく異なる点だろう。
 交友関係が広がり、それを維持し続けるとなれば、自分とは意見や性格が合わない友人との関係も保たなければならない。だから、年齢相応以上の社交性、コミュニケーション能力を身に付ける必要が出てきたわけだ。男の子たちの営業スマイル、女の子のお笑い芸人的なコミュニケーションは、かつてない広さの交友関係を維持するためのリスクヘッジなのだ。

 グループの交友関係を維持しなければならない彼女たちは、コミュニケーション手段であるケータイメールで愛想がないと思われることを何よりも恐れる。最も嫌われるのは「とめ字」と呼ばれるメール文である。「とめ字」とは、例えば「私は、こう思うよ」など末尾に「。」も絵文字もない文を指す。そのメールは、読む側に不快な気持ちをもたらすのだそうだ。
 だから、彼女たちは内容よりも、メールが与える相手への印象にひどく気を遣う。好意がある相手に対しては絵文字をふんだんに使い、楽しげでにぎやかな画面を作る。そのためなら、携帯電話が備える機能を最大限に利用して、自分たちなりの使用法を次々と編み出すことをいとわない。その最たる例が、記号を組み合わせた「ギャル文字」である。逆に事務的な内容の場合は、末尾に「。」を付ける通常の文を使う。こうした小さな違いから相手の感情を読み取る彼女たちの感覚は、ほかの世代にはないものだろう。

話言葉と違って
メールの会話やネット上のmixiとかブログの会話はログがのこってしまうから
余計に「読む側に不快な気持ちをもたらす」事を恐れるんだろうなあとおもう
たった一回のミスが致命的な亀裂を生みかねない


メールやmixiやブログの上で書いてしまった「失礼な言葉」は
相手の気持ちを傷つけたが最後、削除する事は原則出来ない
それは「コミュニケーションをディスった不誠実な態度」とみなされかねないから
特に日常的に頻繁に(メールなどでの)コミュニケーションをとっている人はそう思うだろう


そこには速度の問題もあって
一日何十回もメールを交換する人は、ひとつひとつのメールにいちいちそこまで気は遣っていられないわけだ
だからリスクヘッジの方法はどんどん扱いやすいようにマニュアル化して
結果として営業マンみたいな口調になっていく*2


深川狸汁亭雑記 - 森健『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?―情報化がもたらした「リスクヘッジ社会」の行方』★★★
http://d.hatena.ne.jp/aranjuez/20050921/p1

 少し注意深く、周囲を見回すだけでいい。ビジネスマンがほとんどの仕事をメールをベースにコミュニケーションしているが、毎日何十通ものメールに条件反射的に即レスするしかない。さらに「自席」を廃した会社も増えている。空いた机にLANケーブルを差し込めば、すぐにその社員と認識され、すべての仕事の予定はサーバーでさらされる。電通などは、社員が午前2時過ぎに帰宅すれば即座にその情報が上司のメールに転送される。過労死防止の労働対策といえば聞こえはいいが、残業抑制の賃金対策でもある。IP電話をすべてモニタリング録音するソフトは既に存在し、メールを仕事外あるいは秩序を乱すようなキーワードチェックを設定することはすでに行われている。

 ケータイを離せない少女を見てみよう。断片的な言葉のやりとりから中毒的に逃れることができず、即レスをしなければ友達に嫌われるという脅迫観念に押しつぶされる。コミュニケーションは身の回りだけになり、情報はクラスター化していく。また、日々の消費行為において、商品につけられるICタグはそれがたとえ匿名のものであっても、漏えいした個人情報と対照されてば、企業からのマーケティング対象として、「おすすめ」から逃げることもできなくなる。


一回の失言も許されず
失言したら即座に形式的に謝ってでもリスクヘッジを計らねばならない
薄く広く脆いコミュニケーション
しばさんは「世代的な問題だ」といわれていたけど
今後こういうコミュニケーションの形態が広がって行くとしたら、なんだか悲しい気持ちになるなあ


で、そーゆー窮屈なコミュニケーションに疲れた少年少女達が
”本音”を言える場所として2ちゃんねるやブログのコメント欄が用意されてますよ、と
あーなんかそう考えるとムカついてきた!


こちらも参考
思考錯誤 - 森健『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』


で、まあ

そうした「不安の増大」「他者信頼の低下」「リスクヘッジ志向」のねっこには
陳腐な結論だけど、やっぱり不況があるんだろうと
(つーかリスクヘッジって元々経済学用語だと思うけど)


BI@K:writings:余は如何にして利富禮主義者となりし乎(参考之參:関連書籍案内) - 少し前進(4)−関連するテーマを掘り下げたい人へ
http://bewaad.com/archives/themebased/reflationbookguide.html#relatedissues

熱が出るような体調であるのが問題なのに、体温計があるから熱が出るかのような逆立ちした議論が多い−現在の日本において金融セクターに様々な問題が生じているのは事実であるが、それは日本経済が全体として有するリスクの総量が大きすぎる(いうまでもなくその原因はデフレである)ことが原因であり、そのリスクを減少させない施策は対症療法に過ぎず本当の解決にはつながらないことについての本書の的確な指摘である。


つーか日銀の人達ってのは
自分のヘマで経済を停滞させときながら
若者のコミュニケーション過剰に眉をひそめているようなおっさん達なんですかねえ
2ちゃんねるでウォッチでもされちゃえばいいのに

*1:って書くとドーナツみたいでおいしそうと思ったぼくの脳ミソは死んでいる

*2:以前さやわかさんがチャンネルボーイの口調の紋切り型ぶりを指摘していたけど、彼らのそうした「マニュアル的口調」がこうしたコミュニケーションの形態に基づいているのだとすればなかなか面白いと思う